桜色の糸*完結
「はぁ…」
昨日の今日で、姿が見えないあおに溜め息が出る。
--浮気か…?
頭に過ぎった考え。
有り得ない。
あおに男が近寄らないように暇さえあれば一緒にいた。
だからこの学校で男と話すのは、俺と俺の親友の一樹ぐらいだ。
独占欲、執着心。
悪く言えば---束縛。
「市原、あおは?」
「えーっと…」
視線を外す市原に苛立つ。
--なんか胸騒ぎがする。
葵を探そうと市原に背を向け、歩きだすが
「待って!」
後ろから聞こえた声に足を止め振り返る。
「葵ちゃん、三年の先輩に呼び出されて屋上にいる…」
ボソボソと小さな声だが、ちゃんと耳に届き急いで教室を出た。
バスケをしてかいた汗は教室に戻るとひいていたが今は嫌な汗が背中を伝う。
屋上に続く階段を駆け上がり、見えてきた鉄製のドアを勢いよく開けた。
「あお…」
どんよりと黒い雲に覆われた空。
薄暗い中に輝きを失った髪達が屋上に散らばっていた…