桜色の糸*完結
「高橋葵さん?」
「--え…?」
心が入院し一人で家への道のりを歩いて帰っていると、道路の端に止められた黒い車の後部座席から、金髪の男が出てきた。
秋の夕日を背にした男は固まる私を見てニヤリと笑った。
離れた所から見ても分かるほど金色に染まった髪は痛んでいた。
男は私の方にゆっくりと歩き出した。
「この前の事故」
「あぁ!!この間の!
あの時は申し訳ございませんでした…」
"事故"と言われ思い出すのは心と二人乗りをした時のことで、頭を深く下げ、謝罪をした。
「車の方は…」
「あぁ~、君の彼氏の親からお金貰って買い替えた。」
あの時、坂を勢いよく下った私達の前に車が横切り後部座席のドアに自転車ごとぶつかり、ドアは退廃。
車の修理代は心の父親が支払ったらしく、修理に出さず高級車に変えたらしい。
「でさ、俺葵のこと気に入っちゃったんだよね~」
いつの間にか隣に立ち、肩に腕を回し顔を覗き込む男にゾワリと鳥肌が立つ。
「そ、それ、はちょっと…」
目を見つめてくる男の視線から目を逸らす。