桜色の糸*完結
「あお、携帯がブルッてる。」
--現実はそう甘くない…
「---いい!!きっと家だから!」
誰もこの時間を邪魔しないで…もう少し夢を見させて。
----
「はい、到着。」
彼の声と両足に感じた地面の固い感触に心地よかった夢が終わったんだと気付かされた。
「ありがとう。」
心の瞳が見れない…
きっと今見たら泣き出してしまう。
「おぅ!じゃぁまたな!」
心は私の頬を撫で、キスをした。
頷いた私を見て
「照れてないで早く家へ入れよ」
と言って、背中を向け帰って行った。
俯いて顔を隠したのは照れているからと思い込んだ心に「ホッ」と安堵の溜め息をはいた。
「---っ…」
この涙を見せるわけにはいかない…
私は彼に視線を向けること無く家へ入った。
リビングへ続くドアから漏れる光をジッと見つめながら玄関のドアに背を預けた。
鞄に入った携帯が二回震え、メールの受信を知らせた。