桜色の糸*完結
「おい、心!!」
駅から高校へゆっくり歩きながら向かっていると、後ろから呼ばれ立ち止まり振り向く。
「おー」
制服のズボンのポケットに手を入れたまま怠そうに答える俺に一樹は眉間にシワを寄せた。
「あれ?あおちゃんは…?」
「休み」
「だからそんななんだ?」
「そんなってどんなだよ?」
一樹と肩を並べ話ながら学校へ向かっていると駅から近い宮鷲高校はすぐに着いた。
一樹と"入学式"と書いてある立て札の横を通り、正門を抜けると三年前の中学の入学式を思い出させた。
葵と出会ったあの日は雲ひとつない快晴だったが、今日は
「曇ってるな…」
昇降口の前で歩を止め、空を見上げると黒い雲が空一面を覆っていた。
---持てばいいな…
雨が降り出しそうな空を見ながら願った。
「おーい、心いくぞー!!」
空から一樹へ視線を向け歩きだす俺に
「心は、四組だった。」
「ふーん、っで、あおは?」
「----なかった…」
「はぁ?」
戸惑いの表示を浮かべる一樹が近寄ってきた。