桜色の糸*完結
「--はっ、はぁ、はぁ…」
乱れる呼吸を落ち着かせるために深呼吸をする。
深呼吸した意味もなく、心臓はドクドクと暴れている。
---ピンポーン…
静かな住宅街に響くチャイムの音。
「……」
--いない…?
数分待ってみたが木製のドアが開くことはなかった。
「どこだ?」
頭の中で葵の行きそうな場所を思い浮かべる。
「---っ!」
俺にはあの場所しか思い浮かばなかった…
--あお!!
疲れて縺れる足を動かし、走り続ける。
あおと通い慣れた道。
あおと二人乗りした道。
手を繋いで歩いた道。
恥ずかしそうに頬を染めたあおを背負って歩いた道。
沢山の思い出が詰まった道を走りつづけた。
俺達の思い出の場所へ向かって…