桜色の糸*完結




「--はっ、はぁ、はぁ…」


乱れる呼吸を落ち着かせるために深呼吸をする。
深呼吸した意味もなく、心臓はドクドクと暴れている。


---ピンポーン…


静かな住宅街に響くチャイムの音。



「……」



--いない…?


数分待ってみたが木製のドアが開くことはなかった。


「どこだ?」


頭の中で葵の行きそうな場所を思い浮かべる。



「---っ!」


俺にはあの場所しか思い浮かばなかった…


--あお!!



疲れて縺れる足を動かし、走り続ける。


あおと通い慣れた道。


あおと二人乗りした道。


手を繋いで歩いた道。


恥ずかしそうに頬を染めたあおを背負って歩いた道。


沢山の思い出が詰まった道を走りつづけた。



俺達の思い出の場所へ向かって…



< 81 / 101 >

この作品をシェア

pagetop