桜色の糸*完結
「---はぁ、い、た…」
葵の姿が視界に入り、立ち止まった。
膝に手を付き呼吸を調えながら葵を見つめる。
満開に咲いた桜の木、金髪の長い髪が風によって揺れている。
横から見ても分かる寂しそうな葵の顔にギュッと胸が鷲掴みされるようだった。
声をかけようと口を開くが
「---えっ…?」
葵の青い瞳から涙が一筋流れた。
戸惑い話かけるタイミングを逃した俺は、寂しそうに桜の木を見上げる葵を見つめるだけしかできなかった…
今話し掛けたら全てが終わる…
俺の直感が葵に会ったら駄目だと言っている。
踵を返し帰ろうと足に力を入れた瞬間
「---えっ…しん、ちゃん…」
青い瞳と目が合ってしまった。
お互い何も話さないまま時間が過ぎて行く…
葵の瞳は潤んでなく、涙を流したように見えたのは俺の気のせいだと言い聞かせた。