桜色の糸*完結
「入学式は…?」
黙り込む俺に話し掛けてきた葵の表情は笑顔だった。
葵の笑顔に「ホッ」と安堵の溜め息を吐き、傍へ寄るために足を踏み出した。
「サボった。」
「また?」
「あぁ」
口元を押さえ、クスクス笑う葵はいつもと変わらない。
「制服似合ってる。」
「--サンキュー…」
照れ臭くて頭をガシガシとかく俺に「見れてよかった…」と小さく呟く葵の声は届かなかった。
葵の前に着いた俺を見上げる彼女の頬を撫でる。
「ポッ」と頬が赤く染まる彼女を見て安心する。
彼女の一つ一つの行動を確認する俺。
いつもと変わらない彼女を見つけることで自分に「大丈夫だ」と言い聞かせていた。
「---クラス分けに…」
「えっ?」
首を傾ける彼女。
--いつもと同じ。
「あおの名前がなかった…」
「---っ!」
赤かった頬は青白く染まり、俯いた彼女。
--違う、いつもと…ちが、う…
俯く彼女を見てドクンッと胸が脈打った。
頬を撫でていた手は空を切り、震えている。
「---あ、お…」
愛しい彼女の名を呼ぶ声も震えていた…