桜色の糸*完結

目頭に涙が溜まり流れる前に下唇を噛みグッと堪える。

(---あお!!)


--しんちゃんに会いたい…


一目だけでも会いたい。


我慢していた涙が頬を伝い流れた。
周りから見られようが、真っ直ぐ前だけを見て泣いた。



--彼を思って…











「お、お客様、そろそろ出発のお時間が…」


係りの女性から声をかけられ


「すいません。
今、行きます。」


振り向かずに伝え、手で頬に伝う涙を拭う。
手の甲が髪の毛に触れ、そっと髪の毛を掴んだ。


(あおの髪の毛綺麗だな。)


思い出すのは長い髪にキスをする彼の姿。



「切りすぎちゃったかな…」


腰まであった髪の毛はショートカットに、金色に輝いていた髪の毛は輝くことのない黒髪に。


黒髪を見た瞬間、彼の黒髪を思い出したが染めたのは彼との思い出を思い出すのが辛いから。
だけど、黒髪に染めたら彼の顔ばかり浮かぶ。


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