しゅうくりぃむ 【コメディ】


「ふふふ、勝った」

 それはもう完全な勝利宣言だった。今まで黙って見ていたのは実力への自信の現れだったのだ。如何にアリが束になろうとも、私のヤカンからお湯の一撃の前にすべてはひれ伏す。そう強さとは圧倒的である事なのだ。

 できればもう勝利の美酒に酔いしれてしまいたいところだ。しかし美酒の場所も注ぐグラスの場所すら私にはわからない。我が家はもはや迷宮なのだ。どこに何があるのかなど全て知るものは居ない。

 しかし私恐るべきものを目の当たりにする。アリが流され綺麗になった机の上には息子の夏休みの宿題が無惨な姿でお湯をすってふくらんでいた。私は戦場で下腹が切られた将校の様に必死で内臓を集めるが如く、息子の夏休みの宿題を手で押した。端から見ればその姿は哀れそのものだろう。



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