さよならさえも、下手だった
音都:籠の中の鳥と密猟者


今私の足元は、おびただしい量の赤で染まっている。


床には倒れて動かない両親。

目の前には無表情を崩さない男の人。

眉間にはひやりと冷たい銃口の感触。


「お前を、殺しに来たよ」

そう言われても不思議と恐怖はなかった。

けれども、いつまで経っても銃の引き金を引く音は聞こえない。


「…?」

首を傾げて男の人を見ると、彼も首を傾げていた。

「何も言うことはないのか?お前の両親は助けてくれと泣き喚いたぞ。
娘だけでも助けてくれって」

いいの。
あの人たちには、愛されてなんてなかったから。

「それで俺はお前の親に十分すぎるぐらいの金もむしり取った。
だからもうお前を殺さなくてもいいんだ」



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