さよならさえも、下手だった
――なぁ、1004?
にやりと口角をつりあげて、コードネームで俺を呼ぶ刹那。
知ってる、こいつ。
姿が見えないのに、見えないというのに、音都がここにいることを。
それだけじゃない。
こいつは、音都を殺そうとしている。
「逃げろ!!」
俺が叫んだのと、刹那がナイフを取り出しドアに投げつけたのはほぼ同時だった。
ナイフがドアに刺さる音とは思えないほど鋭い音がして、心臓が止まったかのように息ができなくなる。
呼吸のしかたはどうするんだったろう。