さよならさえも、下手だった
刹那は浅くため息を漏らすと、俺を睨みつけた。
「お前は、いつもそうだな」
もう一本、袖の中に仕込まれていたナイフが俺の首筋に当たる。
俺はその場を動けなかった。
「いつも俺のことを恐れている。今だってこうして向かい合っているのに、まともに目も合わせられない」
弱い奴だ。
そう吐き捨てた声は冷たかった。
「俺だって鬼じゃあない。何の理由もなくお前の依頼を邪魔するつもりはないさ」
音都は、生きているのか?
それさえも不安だった。
目線をドアの方へ向けるが、赤い水たまりは見えない。
大丈夫、きっと。
「お前が完璧に依頼を達成してくれると、信じているよ」
最後に耳に痛い言葉を残して、刹那はドアの向こうへ消えていった。
やっと、呼吸のしかたを思い出した。