さよならさえも、下手だった
――なぁ、1004?
1004ってなんだろう。
夜十の特別な呼び名かな。
でもそれより私にははっきりとわかることがあった。
このままここにいたら…殺される。
本能がそう感じ取るのに体がなかなか動かない。
体中の筋肉が固まっている。
それを動かしてくれたのは、
「逃げろ!!」
という夜十の声。
次の瞬間金縛りから解けたように体が動いて、しゃがみこんだそのとき。
「…っ」
ナイフとは思えないような音が私の鼓膜を震わせる。
頬に鋭い痛みが走った。