さよならさえも、下手だった


段々男の人の顔が険しくなってくる。


でも、逃げてどこに行けばいいの。
逃げた後も、生きていける保証はないのに。

私は男の人を見上げる。

黒い髪を無造作に後ろでくくっていて、左目は長い前髪で隠れていた。


この人に付いていったらどうなるだろう。
そんな考えが頭をよぎって、次にはもう彼の袖をつかんでいた。


「何」

眉間にしわを寄せていかつい顔で睨まれたけど、私はそんなことじゃひるまない。



だって、もっとひどいことならいっぱいされてきた。




< 4 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop