さよならさえも、下手だった
「音都?」
頭上から落ちてきた声で、私は固くつぶっていた目を開ける。
ベッドの上で抱きこむように丸めていた体の緊張が、ほんの少し解けた。
「大丈夫か」
変わらない無表情。
でもそんな風に優しく声をかけてもらったことは本当に、本当に久しぶりで。
また涙が出そうになる。
だって私は醜い人間で、夜十の側になんているべきじゃなくて。
頭の中で様々な思考がぐるぐる駆け回るけれど、それらを口で伝える方法を私は持ち合わせていない。
「…音都?」
ふわり、と大きな掌が私の頭に乗る。
あんまりにも慣れないことに思わずびくりと体を縮めると、彼もまた驚いたように手を引いた。
一瞬灯った温もりが、急に色を失くす。