さよならさえも、下手だった
彼からもらったメモ帳に、震える手で会話を切り出す。
《今日、夜十の後をつけた》
そう言うことで夜十が怒ればいいと思った。
怒って、私のことなんて嫌いになって、私を殺したいと思えばいい。
「…そうだったのか」
でも夜十は何もしない。
怒ることも、銃を構えることも、私を殺すこともしなかった。
どうしてよ。
私はこんなに、殺してほしいと願っているのに。
「俺も相当な落ちこぼれだな。尾行に気づかないなんて」
自嘲するように言って、彼は私の隣に座った。
その横顔は昨日とは違う疲れを見せていた。
私が帰った後に何があったんだろう。
けれどそんなこと、図々しくて訊けなかった。