さよならさえも、下手だった
「来るのか?」
こくんと頷いてみる。
すると男の人は困ったように腕を組み、考え込んだ。
「俺の側は安全じゃないぞ」
ひとつ頷く。
「少なくとも、今みたいに豪勢な生活はさせてやれない」
もう1回首を縦に振る。
「お前が死にそうになっても俺は助けないからな」
3度目の肯定。
そこまですると彼はため息をついて私の手を引いた。
「来い」
付いていくことにためらいなんてなかった。
この檻の中から出られるというのなら、私はどんな不審者の背中でも追う。
小走りで彼についていくと、彼は大股で歩いていた足をふと止めた。
やっと隣に並べた。