さよならさえも、下手だった
「お、と…?」
音都の憂いに満ちた眼差しが俺を捕らえる。
メモ帳にゆっくりと綴られた言葉は、今まで見たどの字より丁寧だった。
《ごめんなさい》
どうして謝るんだ。
その謝罪の言葉の真意がわからなくて、余計に怖くなる。
《ずっとずっと、殺してほしかったよ》
胸にぐさりと何かが突き刺さった。
哀しいとも苦しいとも似つかない、この気持ちは。
「できるわけないだろ……」
情がわいたと、いうのだろうか。
すぐに殺さなかったあの時から、俺に音都が殺せるわけがなかった。
音都にとって俺は悪役だった。
そんなことはわかりきっていた。
でも心のどこかではヒーローになったつもりでいたんだ。
音都を独りきりにしなかった俺は悪役ではないと、自己満足に浸っていた。
そんなわけがなかったのにな。