さよならさえも、下手だった
音都:望んだものと捨てたもの


夜十が旭と呼んだ人がこっちにやって来て、かと思うと首に信じられないぐらいの力が加わる。

苦しい。


だけど、だけど、これが私の望んでいたことだった。

やっと殺してもらえるんだ。
これで解放される。

夜十と一緒にいて苦い気持ちになるのも、わけのわからない思いをするのもこれで最後。

ありがとうさえ言えない私だったけど、きっとこれでよかった。



さよなら、優しい殺し屋さん。





けれども彼は、こんな時でさえ殺し屋にはなりきれなかった。

急に楽になった呼吸。
解放された体。

目の前には必死で私の命を奪おうとする手を払いのける夜十がいた。



どうして、見捨ててくれないの。



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