さよならさえも、下手だった


殺してほしかったと打ち明けても、彼は私の願いを叶えてはくれなかった。

それどころか放心状態の私を抱きしめて、苦しくても生きてくれと泣きそうな声で甘くささやいた。


そんなことを頼まれたら私は、もう――。


ドアが閉まる音が少しずつ遠ざかっていくのを頭の片隅で聴き、その音が途絶えた途端何かが崩れていった。

涙腺が、耐えきれそうにない。


そう感じたのと熱い涙が頬を伝って耳まで流れたのはほぼ同時だった。
今までずっと我慢していたものがふたを開けて溢れだす。

夜十は何も言わなかった。
けれどさっきよりも私を抱きしめる力が強くなって、彼が私を安心させようとしてくれていることはとても伝わってきた。


どうしたって彼は優しい。

だから話さなければいけない。


私は、私のすべてを。



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