さよならさえも、下手だった
物心ついた時には私に両親なんて存在しなかった。
生まれたときにはいたのだろうけど、赤ん坊の時のことなんて覚えてない。
頭の中に残る最も古い記憶は、私が育った孤児院の天井。
今にもひび割れそうで所々シミのある、薄汚い天井。
目が覚めて真っ先に目に入るのがそれだった。
別に孤児院で虐待されているとか、そんなんじゃなかった。
孤児院の先生たちはみんな優しかったし、誰にでも分け隔てなく接してくれた。
だけど私は甘え方がよくわからずに、いつもみんなと距離を置いていたように思う。
だからだろうか、いつもどことなく居心地が悪かったのは。