さよならさえも、下手だった
写真の中の彼らはとても優しそうだった。
この人たちが、私の両親に。
そう思うと胸が疼いて、むずがゆくなった。
「どうかしら。嫌なら断ってもいいのよ」
先生が気づかわしそうに私の顔をのぞきこむ。
私がまだ知らない世界。
そこに行けるというのなら、本で読んだあの温かい世界の中に入れるのなら。
「…行く」
あの時の私は本当に幼かった。
いい意味でも悪い意味でも。
目に見えるものだけが、真実だとは限らなかったのに。