さよならさえも、下手だった
家に入って、だだっ広いリビングに通される。
席について最初に見せられたのは一枚の写真だった。
驚きの声を力いっぱい押し殺す。
そこに写っていたのは、私だった。
けれどよく見ると違う。
私と全部のパーツが同じようで、全部のパーツが少しずつ違っていた。
この女の子は、誰?
「この子は、私たちの娘よ」
「名前は、音」
私とまったく同じ響きを持つ名前。
もう写真の中で微笑む彼女を、他人とは思えなかった。
それは彼らも同じだったらしい。
「音は声帯の病を患って死んでしまった。寂しくて寂しくて、養子をもらおうと孤児院に行ったんだ」
「あなたを見たとき、驚いて倒れそうだったわ…。
だって、とても音に似ているんですもの」
だから私はあんなにこの2人に好かれていたのか。