さよならさえも、下手だった


家に入って、だだっ広いリビングに通される。

席について最初に見せられたのは一枚の写真だった。

驚きの声を力いっぱい押し殺す。
そこに写っていたのは、私だった。


けれどよく見ると違う。

私と全部のパーツが同じようで、全部のパーツが少しずつ違っていた。


この女の子は、誰?


「この子は、私たちの娘よ」

「名前は、音」

私とまったく同じ響きを持つ名前。
もう写真の中で微笑む彼女を、他人とは思えなかった。

それは彼らも同じだったらしい。

「音は声帯の病を患って死んでしまった。寂しくて寂しくて、養子をもらおうと孤児院に行ったんだ」

「あなたを見たとき、驚いて倒れそうだったわ…。
だって、とても音に似ているんですもの」

だから私はあんなにこの2人に好かれていたのか。



< 65 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop