さよならさえも、下手だった


けれどどんなに愛してほしいと願っていても、私は彼らを愛しきることはできなかったらしい。


だから夜十が彼らを殺してくれた時、とても安心した。




もう私は、”音”を演じなくてもいい。


けれどすべてから解放されたと同時に、私はすべての支えを失った。



生きたいと願う心も声も、全部を捨ててまで望んだものは与えてくれないまま、彼らは死んでしまった。



だったら私はこれから何を望んで生きていけばいいんだろう。

そう考えた瞬間、自分が何も持っていないことに気がついた。


空っぽの自分を抱えたまま生きていくぐらいなら、死んでしまいたい。



短絡的だけど真剣にそう思った。



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