さよならさえも、下手だった


「一緒に行くか?」


彼はしゃべれともしゃべるなとも言わなかった。

私が自分の意思を表すまで待って、表さなかったらいくつかの選択肢を提示するだけだった。


待ってくれる。
急かさず、振り回さず、私に合わせてくれる。

ただそれだけのことがこんなにうれしいなんて、思わなかったよ。


私は夜十の提案にこくりと頷いて彼の隣に寄り添うように歩きだす。



建物から一歩外に出て見上げた空は、あまりにも高く――。





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