さよならさえも、下手だった


けれど体が動かない。
地面に縛り付けられているようだ。

動くことが怖い。


動かなければ捕まる。
でも動かなくても確実に捕まってしまう。

猶予期間なんてとっくの昔に終わっていた。


俺がかみしめていた平和は、ただの張りぼてだった。


「愛情などお前には必要ない」

なんで動かない。
なんで動けない。

何も知らない音都が、怪訝そうな表情で俺を見上げる。


音都を、守りたいのに。


逃げろとも言えない。
下手に動けばどうなるかわからない。

どこだ、どこにいる?



出てこい、刹那――。







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