さよならさえも、下手だった
あんまりにも苦しくて我慢できなくて、自ら命を絶とうと思ったこともある。
けれどそんなこと、できるはずもなかった。
首筋ぎりぎりまで当てたナイフ。
こめかみに押し当てた銃口。
俺は最後の一歩を、どうしても踏むことができなかった。
それを見て彼はいつも満足そうに笑っていた。
「俺が殺してやろうか」
非情な彼が差し伸べてくれた救いの手。
他力本願と言われようとも何でもよかった。
この苦しみから解放されるのなら。
もう殺したくもない人を殺さずに済むのなら。
そう頼むと、彼は。