さよならさえも、下手だった
「あ゛あぁぁぁぁぁ!!」
痛い。
痛い。
どうして。
なんで。
彼が突き刺したのは、俺の心臓ではなかった。
銀色に煌めくナイフの切っ先は俺の左目を捕らえて。
事態を認識した時にはあまりの恐怖に、動くこともできなかった。
左目からボタボタとありえないほどの血が流れる。
彼は――刹那は、笑っていた。
とても、とても満足そうに。
「苦しいだろう?死にたいだろう?
だけどお前は死ねない。死なせてなどやるものか」
俺を縛り付ける呪いの言葉。
死ぬことすら俺には許されていなかった。
退路は断たれた。