さよならさえも、下手だった
そのままショック死してしまえればどんなに楽だったろう。
けれども刹那は、人を殺すことに関して天才だった。
だから俺は左目を刺されて多量の血を流してもなお、生きながらえていた。
苦しみからは解放されず、さらに大きな苦しみが俺に覆いかぶさってくる。
「その痛みを忘れるなよ、1004」
――忘れるなよ、決して。
そうささやいて、彼は去っていく。
彼は、どこまでも非情だった。
彼を殺すために生きていこう。
彼を殺すために人を殺そう。
彼を殺すために俺はここにいよう。
決意したからすべてに耐えられた。
思えば、なんて暗い希望だったんだろう。
でも、もうそんなことは考えなくていい。
音都がいるから、俺はそれだけでいい。
殺し屋なんて辞めて、平和に暮らしたい。
俺は、あの光の中で生きたい。
生きたいよ。