後ろの少年
やはり妻はおもちゃの電話にそう語っていた。


「秋穂の恋人?」
 

そんな風に秋穂に聞いたりしていたこともあった。
 

少し良哉が大きくなった頃、良哉は自分の母親が秋穂ではないと分かり始めたようだった。


食事を食べる時以外、秋穂に寄り付かなくなった。


母親に甘えられない。


それを埋めるように良哉は僕の手をつかむようになった。


何も言わず、うつむいたままつかんでいた。


「寂しいのか?」
 

一度、僕はそう聞いたことがあった。


でも良哉はうつむいたままだった。
 

良哉が喋らないのは僕のせいだろうか。


秋穂に相談したことがあった。


「そんなことない」
 

秋穂はやはり涙を溜めて言った。


「守は何も悪いことしてない」
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