桜空

「……水野。お前はとても綺麗な瞳をしているな…なんと真っ直ぐに人を見るのか…」



「もったいないお言葉にございます」



空は頭を深々と下げた。



「……桜」



「あ、はいっ」



私は父に名前を呼ばれ、返事をした。



「……いい男を見つけたな」



「えっ…」



「このような綺麗な瞳をした男はなかなかいない…。俺の心をここまで惑わした瞳は初めてだ」



父はとても優しい目で空を見た。


こんな…



優しい表情の父は



初めて見たかもしれない。



ちょっとは父と分かり合えたかもしれないなんて



ちょっぴりだけど思った。



「――水野」



父は真面目な口調で空を呼ぶ。



「はっ!!」



空もハッキリと返事をする。



その表情は間違いなく、男の顔だった。
< 201 / 211 >

この作品をシェア

pagetop