桜空
「……水野。お前はとても綺麗な瞳をしているな…なんと真っ直ぐに人を見るのか…」
「もったいないお言葉にございます」
空は頭を深々と下げた。
「……桜」
「あ、はいっ」
私は父に名前を呼ばれ、返事をした。
「……いい男を見つけたな」
「えっ…」
「このような綺麗な瞳をした男はなかなかいない…。俺の心をここまで惑わした瞳は初めてだ」
父はとても優しい目で空を見た。
こんな…
優しい表情の父は
初めて見たかもしれない。
ちょっとは父と分かり合えたかもしれないなんて
ちょっぴりだけど思った。
「――水野」
父は真面目な口調で空を呼ぶ。
「はっ!!」
空もハッキリと返事をする。
その表情は間違いなく、男の顔だった。