甘くも苦い誘惑に溺れて
「拓也…大丈夫。もしもあの時…ニューヨークへ発つ事を聞いていたとしても…高校生の私には見送る事しか出来なかったと思う」
「…でも…彰を…恨んだりしなかっただろ、傷付く事も…なかっただろ」
「それはそうかもしれない…。だけどね…拓也は、たまたま先生と話してるのを聞いてしまっただけで…その場にいなかったら、知らなかったんだから。彰ちゃんが…黙ってたんだから…仕方のない事よ」
私は泣いている拓也の背中をそっと、優しく摩っていた。
拓也はもちろんの事、誰も悪くない…悪くないんだから。