灰かぶり姫 -spinoff-
走って走って美由紀の家に着いた時、俺の息はどうしようもないぐらいに上がっていた。


そんな事もお構いなしに美由紀の部屋のドアを思い切り開ければ、ベッドに俯せていた美由紀が驚いた顔でこちらを見上げる。



「雪…何で…」


「何でやあらへん。行くぞ」



近づいて腕を掴めば咄嗟に振り払われる。


それがこんなにもショックだとは知らなかった。



「嫌や!絶対行かへん!」


「…何言うてんねん、お前」



美由紀が俺にハッキリと拒絶の言葉を向けたのはいつ以来だったろう。


思い返せば、俺が歪んだ自己満足を向けるようになってからはいつだって美由紀は何かを言いたそうにしては、それを飲み込んでいた気がする。



「私が行ったら雪は行けへんのやろ?!じゃあ、私は行けへんから雪が行ったらいいやんか!」



泣くでもなく。


笑うでもなく。


目の前にあるのは怒った顔。



激しい激情を目の当たりにして胸が痛むのを感じていた。
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