灰かぶり姫 -spinoff-
「…も、えぇから。早く行くで」


「行けへんて言うてるやろ!」


「美由紀…」



戸惑っていた。


今まで散々泣かせたクセにこんな風に怒りを向けられたのは初めてで、どうしていいかわからない。



「大体…私が行く程のものでもないやんか…。どうせ雪は私がおらんくなったって何ともないクセに!せいぜい苛める相手がおらんくなって暇になる程度やろ?どうせ向こう行ったって、他に苛める相手見つけるんやろ?!」


「はぁ?」


「転校する事だって私だけには教えてくれへんかったやんか!」



ゆっくりと美由紀の目尻に涙が浮かんでいくのに気付いていた。


言わなかったわけじゃない。


言えなかった。


転校するなんて言ったらきっと、美由紀はホっとした顔をするんじゃないかと思った。


そんな顔見たくなかった。


俺が居なくなる事に安堵する美由紀なんて。


だからって。


今ここでそれを言ってどうなる?


それ以前に俺にそんな事言える勇気もなければ権利もない。





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