灰かぶり姫 -spinoff-
そこからの事はほとんど覚えていない。


ただ、美由紀の部屋を後にして店に戻って。


何を食べたのか。


どんな味だったのか。


どう頑張ったって思い出す事は出来なかった。








その二日後、俺は大阪を去る事となった。


新幹線のホームに、仲の良かった友達が見送りに来てくれた。


だけど、そこにはもちろん美由紀の姿はなくて。


それが余計に自分を淋しくさせていた。



「雪、元気でなー!メールしろよ!」


「おう!毎日送るから返事してや!」


「いや、毎日はウザいわー」



最後の最後までアホな会話。


笑顔で手を振った自分の裏側にはいつまでも美由紀の顔が残っていた。

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