灰かぶり姫 -spinoff-
「雪ちゃん、甘いもの好きなの?」


「え?あー…うん、まぁ」



別に特別好きというわけでもなかったが、とりあえずそういう事にしておいた。



「んじゃ、はい。コレあげる」



そう言って野沢ちゃんの手から渡された物は飴だった。



…ていうか。



「……梅味?」



え、何で?


何で敢えて梅選んだん?


ていうか、コレ絶対甘くないよな?


どっちかっていえば酸っぱいんちゃう?


いや、待て。


100歩譲って甘いとしても、俺今チョコ食べたよな?


絶対不味いやろ……




頭の中で色んな考えを巡らせたにもかかわらず、野沢ちゃんはシレっと言い放った。



「美味しいよ?コレ」



自分も包みの1つを口に入れて放り込む姿を見て、半分ヤケクソになった俺は真似をしてその飴を口に入れる。



チョコと混ざりあった梅味はやっぱり酸っぱくて、甘さのかけらなんて少しも見あたらなかった。



オマケに不味い。


不味すぎる。



何だか、不純なキスなんかで淋しさを紛らわせようとした自分への戒めの様にも思えてしまった。
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