灰かぶり姫 -spinoff-
そっと伸ばした手。


体は理屈よりも先に行動を起こしていた。



「いつか…大人になったらまた2人で会おう。そん時は懐かしい気持ちで」



掬いとった涙。


美由紀の目からその続きがたくさん流れてきていたけど、美由紀はにっこりと笑ったんだ。


いつかみたいに、俺が涙を掬ってやれば満面の笑みを向けてくれたあの頃のように。











名残惜しく感じながらも公園を後にするとき、背中に美由紀の声が届いた。



「雪!」



振り返れば、立ち止まったままで大きく叫ぶ美由紀の姿があった。


そこにはもう俺への恐怖は微塵も感じていないような清々しい表情をした美由紀が居る。



「雪も…雪も幸せになって!絶対なって!」


「おう!めちゃめちゃ美人な子つかまえたる!」



片手をグーにして空に向ければまた美由紀の声がまた届く。



「大人になったら絶対また会おうね!しょっちゅうでも毎日でも!」


「おう、それまで元気でな!」



遠目に見た美由紀はもう涙を流していなかった。


その変わりにずっとずっと見たいと思っていた満面の笑みを携えていて。


これでよかったんだと自分に何度も言い聞かせた。
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