灰かぶり姫 -spinoff-
息子である父親が掛け合っても聞く耳を持たなかった祖父が俺なんかの言う事を聞くわけもなく、結局家は3ヶ月前に売れたらしい。


買い主の都合で引き渡しはそこから2ヶ月ほど後になり、あと2週間もすれば祖父母はこの家を離れ、新しいマンションへと移り住む。


高齢の2人が住み慣れた土地を離れるのは俺なんかが想像してるよりずっと大変な決意だったに違いない。


それでも、たった1人の息子家族が遠くに移り住んでしまった事で、2人の決意は揺るがないものへとなった事だろう。


何かあったって、すぐに駆けつけられないんじゃ意味がない。


それなら、住み慣れた土地を離れたって医者が常在してる方がいいのは誰が考えても明らかだった。


新しいマンションが決まった時、祖母は俺に一緒に住むかと聞いてくれた。


確かに今住んでるところよりは祖父母の新しいマンションの方が大阪に近い。


それでも、祖父母に迷惑をかけて家族に心配をかけて。


そんな思いを背にしてまで我が儘を言える程、自分よがりにはなりたくなかった。


せめて俺がもう少し勉強が出来て兄貴みたいにいい息子だったなら話は変わってきていたのかもしれないが。






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