灰かぶり姫 -spinoff-
「雪ちゃんね、いつも楽しそうにしてるけど…たまに一瞬だけ誰も見てない瞬間にすごく淋しそうな顔する」



こちらを真っ直ぐに見ながら話す野沢ちゃんを見る事が出来なかった。


全てを見透かされているようで。


あまりにちっぽけな自分まで晒してしまいそうで。



「別にね、こんな事聞くつもりじゃなかったんだ。ただ…今日ここに来てから淋しそうな顔する瞬間が多いから。別に言いたくなければいいけど。大阪戻って何かあった?」



その言葉を聞いて観念した。


彼女に虚勢やハッタリは通用しない。


だってすでに見抜かれてる。




諦めた俺は、美由紀との関係や今までの事。


そして今回美由紀との間にあった事を全て話した。


口に出して話せばリアルに頭の中にその光景が思い浮かび、恥ずかしいと思いながらもまた涙が零れていた。


野沢ちゃんに泣いたところなんて普通に見られた事あるクセに今俯いてそれを隠そうとするのはきっと、これが本気の涙だからだろう。
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