灰かぶり姫 -spinoff-
「俺…あいつの事忘れる為に大阪行ってきたのに…全然忘れられてへん…ほんまダサい……」



ボソっと呟いた声。


だけど、そんな声でも彼女の耳には届いていたらしかった。



「大丈夫。格好いいよ雪ちゃんは」



ポン、と頭に手が置かれたのがわかった。


ゆっくりと撫でるその仕草が心地よくて、悔しくもまた涙が零れおちる。



「よく頑張ったね。偉かったね」



普段は俺の話なんて聞いてるようで聞いてないクセして、こんな時に優しくするなんて卑怯だと思う。


それでも、今ここに彼女が居てくれて心底よかったと思った。


淋しいからと不純な動機でキスをしていた頃とは違い、ただその存在が温かな物に感じられる。
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