灰かぶり姫 -spinoff-
「なんか…大人やな野沢ちゃん」



ポロっと出てしまった言葉。


だけど、それを聞いた彼女の顔が一瞬曇った気がするのは気のせいだろうか。



「…早く大人になりたいね」



そう返した彼女はすでに俺に優しく微笑んでいて、何かを聞く事は出来なかった。


野沢ちゃんは落ち着くまでずっと頭を撫でていてくれた。


その後はお互い宿題なんてする気にもなれず、ずっと家の中で他愛もない話しに花を咲かせる事になった。



「そういや、野沢ちゃんて好きな奴おらへんの?」



会話の中でそう訪ねた俺。


普段は美姫ちゃんと純の事ばかり目について、彼女のそういった話しは聞いた事がなかったと気付く。



「いるよ」


「え、嘘!誰誰?俺知ってる奴?」



思いの他アッサリと認めた野沢ちゃん。


なんとなくテンションが上がって身を乗り出して聞いてみた。
< 57 / 85 >

この作品をシェア

pagetop