灰かぶり姫 -spinoff-
俺が部屋に残る2人の異変に気付いたのはお盆にジュースを乗せて戻ってきた時。


少し開いたままになったドアの向こうから2人の声が聞こえてきた。



「いつも大丈夫だって言って笑うんだね」


「え?」


「女同士じゃなきゃ言えない事もあるのかって思ってたけど、そうじゃないんだ」


「美沙?」


「美姫はもっと誰かに甘えていいんじゃない?美姫の言う「大丈夫」はあんまり大丈夫そうじゃないよ。見てて少し辛くなる」




女同士じゃないと言えない事。


俺がどんなに美姫ちゃんと純に上手くいってほしいと願っても、俺が居ると美姫ちゃんは相談を口にする事もないのだろうか。


2人の行き先以上に美姫ちゃんや野沢ちゃんを大切な友人だと思っている。


それでも、俺には言えないのだろうか。


いつかに似た孤独感が舞い戻る。


俺のいない場所で繰り広げられる笑いや相談事。


そこに入りたくたって、その場に居ない俺が入れるわけもない。



でも俺は今、ここに居るのに。



美姫ちゃんと野沢ちゃんと一緒に居るのに。

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