灰かぶり姫 -spinoff-
その後、美姫ちゃんが俺から離れたと同時に違う温もりが体を覆い尽くしたのがわかった。


それが野沢ちゃんの温もりだと知って、妙に動揺してしまう。


彼女にこんな風に抱きしめられたのは初めてだからだろうか。


美姫ちゃんよりも優しくて、心地の良い温もりだと思った。


背中をさする手が優しさで溢れている。


きっと、俺は彼女に憧れに似た物を抱いているのかもしれない。



俺の孤独に初めて気付いてくれた人。


一番弱い部分を初めてさらけ出してしまった人。


そんな俺の傍に居てくれた人。



自分より遙かに大人だと思える彼女が羨ましいのだろうか。


その背に手を回す事に躊躇った。


それでも回したかった。


思っていたより遙かに薄いその体に手を回して強く抱きしめれば折れてしまうんじゃないかと思えてしまう。


それでも、優しい彼女ならもしかしたら限界まで許してくれるんじゃないか、なんて勝手な想像。




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