灰かぶり姫 -spinoff-
「悪いけど、全然。美姫ちゃんはえぇ友達や。それ以上に考えた事なんか1回もないなぁ」


『…っ、お前、だったら姫にキスするとか言うなよ!そんなんでアイツが傷付いたらどうするつもりだよ!』



俺の言葉に取り乱した純を珍しいとさえ思った。


普段は何事にも無関心なクセに美姫ちゃんの事1つでここまで熱くなれる。


だったら、やっぱり2人は一緒に居るべきだ。



「純。悪いけど俺は好きじゃなくてもキスぐらい簡単に出来るで。大体お前はどうやねんな。美姫ちゃんにキスしたんは今のとこ俺やない、お前やろ」



純が何かを言いたそうにするのがわかった。


それを遮って美姫ちゃんの事が好きなんだろうと問いかければ返事をしない。


その態度が妙に苛ついて思わず口を開いてしまっていた。



「俺、2人見てるとたまに苛々する。お互い不器用で素直にならんくて。周りの方が気ぃ遣うわ」



それはまるで俺と美由紀そのもので。


もっとこうすれば上手くいくのにとか、何でここでそういう事を言うんだろうとか、第三者として見るからこそ余計に目についてしまう。


自分達もそうだったのかと悔しく思えてしまうんだ。





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