灰かぶり姫 -spinoff-
「とりあえず、今日の宿題貸して」


「あ…あの、まだ…やってない…」


「んじゃ、今すぐやって」



そう言えば美由紀は呟くようにしながら言葉を紡いだ。



「あの…雪。私もう、こんなん嫌や…」


「あ?」


「宿題くらい、自分でやってよ…」



それすらも目に涙を浮かべている。


そして、またそれに「自分は特別」であると感じてしまう。



「お前も言うようになったなぁ」


「え?」


「昔は俺の前でしょっちゅうチビっとったクセに。いつもそれの後始末したったんは誰や?」



笑いながら言えば美由紀は途端に顔を赤くした。



「そんっ…なん、幼稚園の頃の話しやんか…」


「んなもん知るか。あん時の恩を今返せ」



ここまで言えば、もう俺には何を言っても通用しないとでも思ったのだろうか。


美由紀は無言のまま机に向かいだして、今日の宿題に手を付け始めた。






脅迫じみているとはわかっている。


事実、俺を見る美由紀の目は恐怖に満ちていて。


なのに、それすらも「自分にだけ」だと感じてしまう。



最早、俺は病気なのだろうか。
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