空色
私はその場から逃げるように走った。

『どうしたんだろうね。アミ』

悲しくて悲しくて、私は止まることができなかった。

『っつー…』

涙がこぼれ落ちる。いまさら気づくなんて…遅すぎたよ。

翔のことが本当に“好き”ってことに…

ドン!

前を見ずに走っていたから誰かにぶつかってしまったようだ。

『アミ…?どうしたの?』

私がぶつかった人は佑久だった。

佑久のほうを見る。

『た…佑久…私翔のことが好きなのに…どうしてあんなこと…』

涙をながし、弱々しい声で言った。

その瞬間佑久は急に私の体を抱きしめた。

『好き…』

『…何言って…』

『ずっと前からアミのことが好きだった入学式の時からずっと…アミだけを見てきた…!』

急な佑久の告白に私は焦った。

『…佑久でも私…』

『俺にしなよ!俺ならアミのことを泣かせたりしない!大事にする…!』

そうだよね…綾と翔は付き合うんだもん。二人を見ていても辛いだけだし…

佑久と付き合えば綾と翔を見ても苦しくないかな…?翔のこと忘れることができるかな?

『…私…佑久と付き合うよ…』

私は佑久の優しさにすがるように佑久の体をギュット抱きしめた。

『…キスして…』

『アミ…?何言って…』

『お願い…私にキスして…』

そうすればきっと翔のことを忘れられる。佑久を好きになれるはず。

『本当にいいの…?』

『うん…』

佑久は優しく私にキスをした。

ボロボロになった心に甘く染みてくる…

翔のことなんかもう…



< 64 / 82 >

この作品をシェア

pagetop