四畳半の茶室から
先生
「茶室では、指輪は外してくださいね」



自分の指にはまった指輪を眺め、感慨に浸っていたあたしに話しかけたのは、妙なアルカイックスマイルを浮かべた隣に座っている男。


「……はぁ?」


今、あたしは茶道教室に来ている。


母親が

「礼儀作法は大事よ。通いなさい」

と言って無理矢理あたしを連れてきたのだ。


もちろんあたしは抵抗した。


だって、青春真っ盛り、遊びたいに決まってるじゃん!

そんな行きたくもない茶道教室で、着たくもない着物を着て、飲みたくもない苦いお茶を飲まなきゃならないのに……



その上、何で初めて会った男にそんなこと指摘されなきゃならないの?



家元に言われるのなら、従うかもしれないけど…。


どうみても、この人高校生。あたしと同じ、この教室の生徒だよね…!!




どうにもこうにも、機嫌が悪かったあたしは、ささやかな抵抗をして見せた。


そう、ほんのささやかな。



「…えっと……これは外したくないんですけど…」



一瞬の静寂、そしてさっきのような無言のアルカイックスマイル。



…あ…納得してくれたのかな…?


あたしがそう思った刹那。



「ふっざけんなああああああぁぁぁああぁぁああああ!!!!!!」


茶室に怒声が響いた。


 
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