屍都市
亡者達の群れをまともに相手していてはキリがない。

適度に蹴散らした所で、秀一は群れを振り切って走り始める。

動きに無駄がない。

陰島でのサバイバル経験を生かし、的確な行動をとる。

恐らく彼ほど、ゾンビに対して最善の行動を取れる人間は存在しないだろう。

どれ程戦闘訓練を受け、銃火器の扱いや格闘術に長けた人間だろうと、対ゾンビ戦闘に関して言えば秀一の足元にも及ばないかもしれない。

無事に日常生活に戻って以降も、秀一は己の肉体を鍛錬する事を怠らなかった。

が、それは全て陰島でのトラウマ故。

用心深いのではない。

彼は臆病になっていた。

またあの悪夢に引き込まれてしまったらどうしようと、脅えていたのだ。

そして不幸にも、秀一は人生二度目の悪夢に今放り込まれている。

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