屍都市
何故子供が一人でこんな危険地帯をうろついているのか。

親はどうしたのか。

何の目的があって動物園に入っていったのか。

理由は何もわからない。

しかし秀一には彼を追いかけるだけの価値があった。

『生きている』

そう、あの子供はゾンビ化もしていないし、死んでもいない。

自分の意思で歩き、怖がり、涙し、助けを求めてこの街を駆けずり回っているに違いないのだ。

偽善者と嘲笑されるかもしれない。

要領が悪いと苦笑されるかもしれない。

だが手を差し伸べて助けられる命ならば助けたい。

たとえ自分とは何の接点もない人間だったとしても。

秀一は時折姿を見失いながらも、必死で子供の後を追った。

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