屍都市
動物園内は騒がしかった。

異常事態が発生しても尚、鉄格子の中に閉じ込められているしかない動物達。

虎が檻の中で落ち着きなく右往左往している。

フラミンゴが必要以上に羽ばたきを繰り返している。

チンパンジーが樹上に駆け上がって悲鳴のような声を上げる。

彼らもまた、街に降りかかった災厄を肌で感じ取っているのだ。

動物は人間以上に危機察知に優れる。

この街で今何が起きているのか。

檻の中にいながら、彼らは全て見通しているのかもしれない。

そんな中を。

「やっと追いついた!」

秀一は子供の肩を掴む。

「やだ!やだやだやだやだ!」

脅えきっているのだろうか。

男児は滅茶苦茶に暴れて秀一の手を振り解こうとする。

「落ち着け、大丈夫!大丈夫だ!」

がっしりとした手で子供を抱き止める秀一。

「怖くない。俺はお前の味方だから」

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